はじめまして、プロ作曲家として活動しているやまもとと申します。
作家歴は10年以上で、現在は専門学校やオンラインレッスンなどで
DTMや作曲を教えています。
レッスンをやっていると、普段どういう勉強をすればよいのか
ということをよく聞かれます。
DTMは、理論やDAW操作や楽器演奏、ミックスの知識、技能などが必要になるため
生徒さんの進行具合によって、その答えは変わってきます。
またちゃんと勉強しようとすると、それなりに時間と労力を使いますので
今日は、簡単にできる勉強法をお伝えします。
それは、ずばり「音楽を聴く」ということです。
「聞く」ではなく「聴く」ですね。
私は『音楽の聞き込み』と呼んでいます。
日々の生活の中で、どうしても時間がとれず、
DAWとじっくり向き合う時間は取れないこともあると思いますが、そういう時はこの聞き込みをやってみてください。
さて、音楽を聴くなんて当たり前のことじゃないかと思うかもしれませんが
意外にもできていない人は、けっこういます。
この場合の音楽の聴き方ですが、単純に聞き流さないで、音楽をサウンド、コード、メロディメイクなど、多角的に聴くことを、目的とします。
聴き方として1番良いのは、BPMをあわせたDAWに音源を貼り付けて聞くのが良いでしょう。そうすればコードをとったり、気になる部分を
何度も聞いて考えたり、音の構造を想像したり耳コピで実際に打ち込んでみたりすることもやりやすくなります。
もちろん音楽を流して聞くのとは違って、DAWに貼り付けたりと多少の手間はありますが
それでも、わりと実践はしやすいほうではないでしょうか。
さて音楽の聞きこみには、いくつものメリットがあります
■インスピレーションをうける■楽曲構造を理解する■サウンド感を鍛える■耳を鍛える |
インスピレーションをうける
まずは、単純に音楽を聞くことで、刺激をうけたり、新しいアイデアを得ることができます。そしてそれは、自分へのモチベーションアップにも繋がります。
そして、聴いた曲のどの部分が自分の琴線にふれるのか、考えてみましょう。
DAWにはメモ機能があるのもありますし、そこに書きだしてみても良いですし
ノートなどにメモしても良いでしょう。
楽曲構造を理解する
楽曲を聴いて、この部分がカッコいいなとか、このコード進行素敵だなとか思えたら
その部分を何度も聞いて、何故自分が
良いと思えたかを分析しましょう。
それがコードに起因するなら、そのコードが
ダイアトニックのものなのか、転調してるのかなど調べて、ノートなどに書きとめておきましょう。そうする事により、今度は自分の楽曲でそのコード進行を使うことができ、引き出しが増えていきます。
IZ*ONEの「好きと言わせたい」という曲で例にあげてみましょう。
まずこちらの曲(特にサビ)を集中して聴いてみてください。
それでは質問です。答えられない場合は何度か聴いて考えてみましょう。
- ① サビの小節数はどれくらいありましたか?
- ② サビのメロディはどのタイミングで始まっていますか?小節の前ですか、後ろですか?
- ③ サビで特徴となるコードはありましたか?
小節数について
こちらの曲は1分6秒くらいからサビに入ります。
サビは全部で12小節ありますが、ここは8小節+4小節にわけることができます。
最初8小節は「(絶対)好きと~」の部分
次の4小節は「(抱き)しめて~」の部分です
サビの中でも前半後半と展開をつけていることがわかります。
メロディの特徴
(絶対)の部分は、アウフタクトですので、この曲はサビが小節の前から入ってくることもわかります。
(抱き)の部分もアウフタクトで、小節前からメロディが入ってきています。
最初の8小節間は同じような覚えやすいフレーズがつづき
次の4小節間で、サビの締めに入っています。
ここだけでも、サビの作り方の1例がわかると思います。
フックとなるコード
サビのコードですが、わりと、最初の8小節は繰り返しのコードで展開している
のですが、次の4小節に入ったところの
「抱きしめてくれても伝わってこない
ちゃんと言葉でちょうだいWon’t you kiss」
の「(ちゃん)と~」
の部分で、ちょっと「おっ」と感じる部分があるかと思います。
どこか、違う雰囲気、世界観に一瞬なるような感覚です。
それまでが、繰り返しの多い安定したコード進行でしたので
よけいにこの「(ちゃん)と~」)部分が曲のフックとして感じられます。
4小節のところだけ譜面にしてみました
フック部分は「Dbm6」のところです。
ここはサブドミナントマイナーという手法で、一種の転調を使っているので
違う世界観を感じられるのですが、メロディの音も6度の音を使っているので
より緊急感のある雰囲気を演出していると思います。
サブドミナントマイナー自体は、教則本やネットなどで
も調べればわかる知識だと思いますが、これを、どういうタイミングで使えばよいか、どういうメロディをのせればいいかなどは、なかなか書かれていないと思いますので、こういった市販の曲を聞いて自分の知識にすることができます。
仮にここで使われているコードがサブドミナントマイナーだとわからなかったとしても
それは、後々勉強していけばわかることですし、現在の自分に足りない部分を認識することができます。
サウンド感を鍛える
アレンジを自分でするとき、なんの楽器、音色を使えばいいかわからない時はありませんか?
アレンジにつまずいてる人で、どの楽器を使えばいいかわからない人は多いです。
多くの場合、楽器に関する知識が足りていない場合があります。
音楽を聞き込んで、参考曲がどんな楽器で、どのような奏法で、どのような役割りを担っているか考えながら聞いてみてください。
音楽はもちろん、感覚、センス、フィーリングが重要ですが、
それだけでは、どうしても1曲をまとめるには難しい場合もあります。
そういう時にこういう分析が後に活きてくるのです。
耳の訓練
初心者の方に特に意識していただきたいのが、この耳の訓練です。
初心者の方が作る曲で多いのが、不協和音に
気づかないということがあります。
音楽として違和感を違和感と思えない感覚は 早めに直しておいたほうが良いです。
もちろん、音楽理論の勉強や楽器の演奏でも不協和音を認識できるようになるとも思いますので思い当たる人は、こういった勉強とあわせて、市販の曲をよく聞き自分の感覚の矯正を
図りましょう。
まとめ
これまでみてきたように「音楽の聞き込み」は、音を聞くという当たり前の原点を少し深堀りするようなものです。
分析に近いものかもしれません。
総合的に音楽基礎力や感覚をブラッシュアップできるものですので
全くこれからの初心者の方も、ちょっと行き詰ったという方も、ぜひ意識してもらえたら
と思います。